研究で使うAIを選ぶ: チャット形式の生成AIとAIエージェントの違い
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結論: 私はAIエージェントを基本にするが、無料のチャット形式でも始められる
私は、研究の文脈・根拠・記録につなげるために、AIエージェントを基本に使っている。ファイルにある論文、現在の仮説、過去の判断、読ませてはいけない資料のルールをたどれる状態で相談した方が、研究を進めやすいからである。
一方で、この記事で扱う考え方の多くは、無料で使えるチャット形式の生成AIでも実践できる。必要な事実や自分の考えを入力・添付し、根拠を確認し、結果を記録へ戻せばよい。AIエージェントや有料プランは、研究を始めるための必須条件ではない。
この記事は、ChatGPTやClaudeなどの会話形式の生成AIを使ったことがあり、研究でAIエージェントを使う意味を知りたい読者に向ける。コマンドやGitの知識は前提にしない。
「簡単な作業はチャット」だけでは分けられない
チャット形式の生成AIとAIエージェントを、「軽い作業か、重い作業か」だけで分ける説明を見かける。しかし研究では、一見簡単に見える作業にも、背景や根拠とのつながりが必要になる。
たとえば、分からない用語や考え方を説明してもらう場面を考える。単に一般的な説明を聞くだけなら、チャット形式で十分かもしれない。一方で、今読んでいる論文や研究ノートにある資料を引用しながら説明してほしいなら、その資料へたどれるAIエージェントの方が扱いやすい。
チャット形式で同じことを頼むには、引用してほしい論文や記録を自分で選び、その都度入力・添付する必要がある。さらに、どの資料をどこまで渡せば説明に十分かを判断しなければならない。必要な資料を渡し忘れれば、説明の根拠や比較の範囲も狭くなる。
論文を読む前に確認したい観点を整理する場合も同じである。チャット形式では、研究の問い、今の仮説、すでに確認したことを必要に応じて自分で渡す。AIエージェントなら、あらかじめ整理した記録やリンクを参照するよう指示できるため、毎回同じ背景を説明し直す負担を減らせる。
ここで大切なのは、AIエージェントが常に正しい答えを出すことではない。どの資料を根拠にした説明かをたどり、事実と提案を分け、自分で判断しやすくなることである。
AIエージェントを基本にすると、文脈を引き継ぎやすい
AIエージェントは、ファイル、ツール、継続した指示を扱いながら、複数の作業を進める生成AIの利用形態である。研究で使うなら、資料や記録を何でも一か所に集めるのではなく、役割ごとに分け、必要な関係をリンクしておくとよい。
私の場合は、確認済みの事実を読むためのファイル、仮説や自分の考えを扱うファイルを指定し、関連する記録をリンクしている。読むべきでない資料や外部へ渡してはならない情報は、ルールとしてあらかじめ示す。このようにしておくと、相談するたびに研究の背景を最初から説明せずに済む。
AIエージェントを研究の中へ入れる方法は、第7回で紹介した。チャット形式で必要な文脈を渡す方法と、AIエージェントで記録から文脈へたどれるようにする方法は違っても、確認済みの事実と仮説・考えを混ぜない原則は共通している。
ChatGPT Work(従来Codexで行っていた汎用的な作業を引き継ぐAIエージェント)は、長めの調査、情報の分析、文書などの成果物作成に使える。CodexやClaude CodeのようなコーディングAIエージェントは、ローカルのファイル、リポジトリ、ターミナルを扱う技術的な作業に使える。利用できる機能や環境は変化するため、始める前に各サービスの公式案内を確認する。ChatGPT WorkとCodexの公式案内とClaude Codeの公式案内を参照してほしい。
Chatを使うのは、能力の優劣ではなく使用可能量を配分するため
それでも私は、チャット形式の生成AIを使う。理由は、AIエージェントより能力が低い作業を任せるためではない。私のChatGPTアカウントでは、ChatとWorkで使える量が分かれているため、Workの使用可能量を、研究資料を読ませる作業や長めの調査・整理に残したいからである。
そこで、追加の研究文脈が不要な作業や、必要な情報を短く渡せる作業はChatで行う。これは「Chatの方が向くから」というより、限られた使用可能量をどこに使うかという配分である。
この配分は、すべての読者に当てはまるものではない。利用するサービス、契約、使用可能量、研究資料の置き方によって変わる。大切なのは、ChatとAIエージェントを別々の優劣として比べるのではなく、自分が必要とする文脈と使える量を基準に使い分けることである。
無料のチャット形式でも、研究の進め方は実践できる
AIエージェントを使わない、またはまだ契約しない読者も、研究の進め方を変える必要はない。チャットの入力欄に、今回の問い、確認済みの事実、自分の仮説や考え、確認したいことを必要な範囲で書く。資料を添付できるなら、読む箇所と何を確かめたいかを示す。
対話では、肯定だけでなく、反例、別の案、確認が必要な根拠を求める。対話の後には、内容を事実、思考録、暫定決定、次の問いへ分けて残す。こうした方法は、チャット形式でもAIエージェントでも同じである。第8回と第9回では、この点検と記録の方法を詳しく扱った。
AIエージェントは、文脈を渡す手間や記録への戻しやすさを改善する選択肢である。無料のチャット形式から始め、研究を進める中で「毎回同じ説明をしている」「関連する資料を一緒に確かめたい」「複数ファイルの変更案を作りたい」と感じたときに、導入を考えればよい。
どちらを使っても、人間が担うことは変わらない
チャット形式の生成AIとAIエージェントでは、扱える文脈や作業の範囲が異なる。しかし、研究で人間が担う役割は変わらない。
- 何を確かめるかという研究の問いを決める。
- 読ませる資料と、外部へ渡さない情報の範囲を決める。
- 出力の根拠を原典や記録で確認する。
- ファイルの変更や実行結果を確認してから採用する。
- 結論、研究の方向、スコープの変更を自分で判断する。
生成AIは、根拠の候補、反例、見落としを示す研究補佐になり得る。一方で、もっともらしい案をそのまま採用すれば、検討を早く終えすぎることもある。必要条件、前提、代替案、根拠を確かめながら使う。
まとめ
私の研究では、文脈・根拠・記録につなげるためにAIエージェントを基本にしている。Chatを使うのは、能力の優劣ではなく、限られた使用可能量を配分するためである。
ただし、無料のチャット形式でも、必要な文脈を渡し、根拠を確認し、結果を記録へ戻せば、この記事で扱った研究の進め方を実践できる。まずは今使える形から始め、文脈を引き継ぐ必要が大きくなったときにAIエージェントを検討すればよい。
ChatGPT・Claude・Geminiのどれを契約するかは、関連するAIサービス選択ガイドで扱う予定である。