研究

生成AIと一緒に暴走しない: 必要条件から判断を点検する

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AI時代の個人戦略ラボとAIエージェントと進める研究の基本、第8回、AIと一緒に暴走しないと表示した画像。

もっともらしい案で、考えるのを止めないために

生成AIとの壁打ちでは、明らかな誤りだけを警戒すればよいわけではない。最初に見つけた候補についてもっともらしい説明が返ると、その時点で考えるのを止めてしまうことがある。すると、目的により合う別の候補を見落とし、後から「なぜこれを選んだのか」を説明できなくなる。

チャット形式の生成AIでも、ファイルや資料をまたいで作業するAIエージェントでも、この危険は同じである。出力は判断の代わりではなく、確かめるべき論点や選択肢の候補として使う。

研究の問いや手法を生成AIと検討するときに、候補を早く決めすぎないための考え方を紹介する。

この記事で学べること

残った候補を、採用理由にしない

第2回では、手法名から始めず、研究の問いに答えるための必要条件から考えることを扱った。必要条件は、候補が満たさなければならない性質を明らかにするためのものである。

研究目的に合いそうな手法は、複数あることが多い。最初に見つけた手法が目的を達成できそうだからと採用すると、それは採用理由ではなく、たまたま最初の候補を選んだだけかもしれない。必要条件を満たす候補が一つ残ったことと、「この候補を選ぶ理由を説明できる」ことも同じではない。

まず、目的と問いを手法名なしで言い直し、そこから必要条件を出す。その条件を基準に、既存の手法、改変や組合せ、新しい設計を検討する。これなら、最初の候補を正当化するのではなく、目的により合う案を探せる。そのうえで、各条件について次を確かめる。

説明できない条件や根拠の薄い条件があれば、結論を急がずに検討対象として残す。

候補と前提を狭めすぎない

最初に見つけた候補だけを生成AIに渡して相談すると、比較の範囲もその中に閉じやすい。

手法や方針を考えるときは、少なくとも次の種類を比較対象に入れられないか確認する。

すべてを実行する必要はない。大切なのは、最初に見つけた案以外を考えずに「これで十分」と決めないことである。

前提も同様に点検する。先行研究で使われたデータの形式、比較の条件、手順は、その研究の都合で置かれている場合がある。それが自分の問いにとって本当に必要か、前提を外した案は考えられないかを分けて考える。

生成AIには、肯定以外を頼む

生成AIに「この案でよいですか」とだけ尋ねると、案を補強する回答を得やすい。問いと必要条件を示したうえで、反例、別案、置かれている前提、追加で確かめるべき根拠も検討の対象にする。

確認するときは、少なくとも次を分ける。

生成AIが挙げた論文、事実、比較の説明は、原典や自分の記録で確認する。AIエージェントに資料を読ませる場合は、必ず読む資料と、読んではならない資料や外部へ送ってはならない情報を明示する。それ以外は、関連する記録やリンクをたどって探索させることで、最初に思いつかなかった根拠や論点を見つけられることがある。第7回で扱った研究基盤は、その確認を続けやすくする。

決めきれないなら、暫定として残す

調査や検証の途中では、候補を一つに決められないことがある。そのとき、根拠が十分にそろったように見せる必要はない。現時点で採用するなら、暫定であることを記録する。

記録には、少なくとも次を残す。

こうしておけば、生成AIとの会話で出た案をそのまま結論にせず、次に何を調べ、試し、相談するかへつなげられる。

まとめ: 生成AIに判断を早く固めさせない

生成AIは、候補、反例、前提、根拠を点検する研究補佐として使える。一方で、条件に反しない候補が残ったことや、説明がもっともらしいことだけで、採用を正当化してはいけない。

問いから必要条件を考え、候補の範囲と前提を広げ、根拠を原典で確かめる。決めきれない点は暫定として記録し、次の検証へ進める。第9回では、生成AIとの壁打ちを思考録と次の問いへつなげる日々の運用を扱う。