研究

AIエージェントと進める研究の基本: 連載の案内

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AIエージェントと進める研究の基本: 連載の案内

研究は、手法や実験から始めるものではない。社会的課題と技術的課題を整理する。ここでいう技術的課題は、社会的課題を改善するために、現在の知識・技術・方法では何が足りないかという問題である。何が必要かを考え、根拠を積み上げていく活動だと、私は考えている。

この連載では、卒業研究での試行錯誤から得た研究の進め方と、AIエージェントを研究補佐として使うための基本を紹介する。対象は、初めて研究に取り組む人、途中で行き詰まった人、そして生成AIを研究にどう使えばよいか考えている人である。

この連載を読み終えたときに目指す状態

この連載を通じて、次の状態を目指す。

生成AIを使わない読者にも、前半の考え方はそのまま役立つはずである。AIエージェントは研究を代わりに行うものではなく、研究を堅実に速く進めるための補助者である。

研究の深掘りより先に実験をした

卒業研究を始めたころ、私は研究の深掘りが済んでいないうちに実験計画を立て、小規模な実験を行った。

実験自体はできた。しかし、得られた結果が研究の中核となる問いに答えているのかが分からなかった。結果だけが宙に浮き、次に何をすればよいかも曖昧になった。

結局、私は研究目的と課題の整理へ戻った。この経験から、研究で最初に固めるべきものは手法や実験ではなく、何を解く必要があるのかだと学んだ。

この連載は、同じ遠回りを少しでも減らすための記録である。

自己紹介と、この連載を書く理由

小島 佑太です。情報系の修士課程で研究をしている。

学部時代の卒業研究では、研究の進め方がほとんど分からない状態から試行錯誤を始めた。論文の探し方、問いの立て方、実験の考え方、記録の残し方、先生への相談の仕方まで、少しずつ覚えてきた。

今は、その経験をもとに、研究を進めるための文書や記録をAIエージェントと一緒に整えている。ただし、AIエージェントに結論を決めさせるためではない。自分が考えるべきことを明確にし、根拠を探し、見落としを減らし、記録を残すために使っている。

研究テーマや対象ドメインの話は、この連載では扱わない。分野を問わず使える、研究の進め方と研究基盤の話に絞る。

研究には二つのサイクルがある

研究は、一度考えて終わるものではない。私は、研究には大きなサイクルと小さなサイクルがあると考えている。

大きなサイクル: 一つの研究を始めて終えるまで

大きなサイクルは、関心を持った領域から研究を立ち上げ、成果を発表や論文としてまとめ、次の課題へつなげるまでの流れである。

  1. 関心を持てる領域を見つける。
  2. 社会的課題と技術的課題を整理する。
  3. 先行研究を調べ、何が分かっていて何が分かっていないかを整理する。
  4. 中核となる問いと、その問いに答えるための必要条件を定める。
  5. 手法を選び、実験・調査・分析などで小さく検証する。
  6. 結果を分析し、研究として何が言えるかを組み立てる。
  7. 発表や論文としてまとめ、残った課題を次の研究へつなげる。

卒業研究は、多くの場合、この大きなサイクルを一周する活動になる。

小さなサイクル: 日々の調査と検証で回す

大きなサイクルの中では、より小さなサイクルを何度も回す。

  1. 今分かっていないことを問いとして書く。
  2. 仮説を置く。
  3. 論文を読む、調べる、小さく試す。
  4. 得られた事実と考えたことを記録する。
  5. 結果を解釈し、次に確認すべき問いへ更新する。

文献調査、実験、週次報告、先生への相談は、すべてこの小さなサイクルの一部である。最初から完璧なテーマや方法を決めようとするよりも、このサイクルを回しながら問いの精度を上げていく方が、研究は前に進みやすい。

この連載で扱うこと

第1回: 連載の案内

この連載の案内として、研究の大きなサイクルと小さなサイクルを紹介する。

第2回: 研究は手法から始めない

第2回: 研究は手法から始めない: 問いをつくる順序では、社会的課題、技術的課題、必要条件から研究の問いをつくる。使えそうな手法を探す前に、なぜその機能が必要なのかを考える。

第3回: 論文の探し方が分からない人へ

第3回: 論文の探し方が分からない人へ: レビュー論文、引用・被引用、AIの使い方では、レビュー論文、引用文献、被引用文献を使って研究分野をたどる。Deep Researchなどの生成AIは、検索語や読むべき論文の候補を探すために使い、出典は自分で確かめる。

第4回: 論文をAI要約から読む

AI要約で問題設定、手法、実験、結果、著者の考察の全体像をつかみ、原典で確かめながら自分の問いとの関係を考える。

第5回: 実験を宙に浮かせない

起こりうる結果から結論を逆算し、その実験が中核の問いに答えられるかを確かめる。

第6回: 研究を忘れずに積み上げる

思考の軌跡、決定事項、週次報告を分けて残す。後から理由を見失わず、先生との前提もそろえやすくする。

第7回: AIエージェントを研究補佐にする

記録をつなぎ、変更履歴を残す仕組みをつくる。具体的には、Obsidian(記録を残すノートアプリ)、Git(ファイルの変更履歴を管理する仕組み)、相対リンク(同じ記録群のファイル同士を結ぶリンク)を使い、根拠・判断・変更を人間とAIエージェントの両方が追える研究基盤をつくる。

第8回: 生成AIと一緒に暴走しない

生成AIは、使えそうな手法や残った候補へ思考を収束させやすい。必要条件、代替案、手法が前提にしている条件を検討し、思考の早すぎる収束を防ぐためのガードレールを考える。

第9回: 生成AIと研究を進める

第9回: 生成AIと研究を進める: 壁打ちを思考録と次の問いにつなげるでは、自分の考えを生成AIに説明し、矛盾、反例、見落としを検討する。生成AIの理解と自分の理解を照合し、対話を思考録、暫定決定、次の問いへつなげる。

公開した回には、この一覧からリンクを追加していく。

AIエージェントを研究に使うなら

AIエージェントのサブスクリプションは、研究の記録、文献探索、壁打ち、文書整理を継続的に行うなら、十分に検討する価値があると私は考えている。

理由は、単に文章を早く書けるからではない。研究の資料を読み、関連する根拠を集め、思考を整理し、見落としや反例を出してもらうことで、自分が本当に考えるべき部分へ時間を使いやすくなるからである。

ただし、生成AIはユーザーの考えに安易に同意しやすい。指示をしなければ、もっともらしく見える手法や説明に早く収束し、別の案や前提の見直しを十分に行わないこともある。

生成AIの出力は、そのまま結論にしない。根拠を確認し、事実と推測を分け、研究目的に照らして人間が判断する。この姿勢を守れば、生成AIは研究を進める強力な補助者になる。